memo/読書記録/灯台守の話

May 19, 2021

おしまいがない

著者:ジャネット・ウィンターソン
訳:岸本佐知子
発行者:川村雅之
発行所:株式会社白水社
印刷所:株式会社三秀舎
発行年数:2007年10月20日印刷 2007年11月10日発行

灯台(英:lighthouse)
島・岬(みさき)・港口などに設けて、夜は灯光を放ち、船舶に対して航行の安全を図る施設。
Oxford Languages

灯台を目にしたことがあるのに、記憶をたぐっても印象が薄い。
多分それは、太陽が出ている昼間の灯台しか見たことが無いからだと思う。
灯台を灯台たらしめるのは、日が落ちてから。(という思い込みのひとつ)
海には山を一つ越えないといけない場所で育ち、今も海からは離れた場所で暮らしているから、夜の海に縁がなく、灯台から光が放たれるのを見たことが無いせいだろう。
まして、灯台守という職業があることに驚いた。
本著は、住み込みで、光の世話をしている灯台守の“物語”。

10歳で天涯孤独になった少女・シルバーを後継者として引き取った灯台守のピューが語るには、船乗りは岬を海図で覚えたりはしなかった。岬の一つひとつを物語で覚えていた。どんな灯台にも多くの物語があったと。
灯台の光を絶やさないこととは、物語を語り続けること。
これは、“物語”の“物語”。
亡くなった母を思い出し泣き出したシルバーにピューが言う「自分を物語のように話せばそれもそんなに悪いことでなくなる」

もうひとりの“物語”は、バベル・ダーク。
灯台に光が入った日に生まれた男。
彼の“物語”もシルバーとともに並走していく。
彼は、どうしてこんなにも自分に厳しいのかと思っていたけれど、シルバーが言う「自分ほど愛することの難しいものはない。なぜなら愛と自分本位はちがうから」というところで、バベルに対する靄が少しはれた気がする。

私にとっての灯台の光は何だろうか。

すべての灯台が“物語”だった。そして、そこから海に向かって放たれる光もまた、導き、報せ、慰め、戒めてくれる、物語そのものだった
「灯台守の話」ジャネット・ウィンターソン 岸本佐知子 訳

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