memo/読書記録/優しい地獄

Nov 16, 2023

ルーマニアから東京、弘前

「優しい地獄」書影

著者:イリナ・グリゴレ
装幀:寄藤文平+古屋郁美(文平銀座)
発行所:株式会社亜紀書房
印刷:株式会社トライ
発行年数:2022年8月2日 第1版第1刷発行/2023年2月1日 第1版第3刷発行

この本を見つけたのは、なんとなく自分の中に“地獄”というワードが引っかかっている時期だからなのかもしれない
現に、最近の電車のおともはダンテ「神曲 地獄篇」だったのだから

著者はルーマニア出身の女性の身体とジェンダーに関する映像人類学的研究者
繰り返し語られる幼少期のエピソードに登場する郊外に住む祖父母とその家が情景として立ち上がってくる
ルーマニアに行ったことは、まだないのに
匂いや光の色、温度など、まるで、私も幼少期にその近くで暮らしていたかのような位に身近に感じる
これは著者が映像で表現することを主としているからだろうか

それとも、

例えば、足の裏から細い根が大地に向かって伸び、大地に張り巡らされていたら、ほかの根と絡み合ったり、すれ違ったり取り込んだり取り込まれたりすることがあるかも知れない
その時に誰かの経験や思考のほんの一滴が自分にも流れこんでくる可能性を想像するのは少し楽しい
著者がこの本を書いた時点では、私が生まれ育った場所に暮らしていたということは、どこかで私が残した根の端が何かを捉え、イメージが流れ込んできたのだとしたら?などと考えたりしながあら読み進める

(深刻な事では無いのだけれど)私の基本姿勢として「もういろいろと取り返しがつかないし、やり直せないならこれ以上やりたくない」と思って生きている傾向がある
著者の「これからは、自分の身体が透明になるまで世界に開いていく。」の項を読んで、私もまた新たに生まれてきたと思ってやっていけるかも知れないと思えたのは、とてもいい読書体験だった

タイトルにもなった「優しい地獄」は著者の幼い娘が発したことばがそのまま使われているのも驚くし、発端が「神曲 地獄篇」なのにも(自分の中でだけ)納得した

そして、山に初冠雪があったと思ったら、里にも雪がチラついたと報せが入る
白鳥と一緒に北から冬が降りてきている

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