memo/読書記録/クララとお日さま

Mar 22, 2021

自分の人生全肯定/哲学系SF/ゴーストはささやかない

著者:カズオ・イシグロ
訳者:土屋雅雄
装画:福田利之
装幀:坂川朱音+鳴田小夜子(坂川事務所)
発行者:早川浩
発行所:株式会社早川書房
印刷:中央精版印刷株式会社
発行年数:2021年3月15日初版発行

「映像として浮き上がってくる物語」でした。
読んだと同時に、「観た」という読後感を味わう体験をしました。

この本は“クララ”の回想という体裁をとっています。
クララは、人工知能を搭載したアンドロイド。
小学生から中学生くらいの年代に向けた、“人工親友”として作られ、エネルギー源は太陽光なので、クララは、“お日さま”には信仰に近いものを持っています。

近い将来を思わせるような時代設定。
エンジニアは“置き換え”られていたり、クララに対して「掃除機みたいに扱えばいいの?」と聞く隣人や「仕事を奪うだけかと思っていたら、座席まで奪うとはね」という劇場前で出会った人。
そんなクララも最新型ではなく1世代前のいわば旧式で、すでに“置き換え”られている個体です。
でも、どの個体よりも観察力に優れ、そこから知識を吸収していく学習能力もずば抜けています。
クララは、その観察力を使って、あらゆるシュチュエーションで自分を人工親友として選んでくれたジョジーの幸せを第一に動こうと考えています。
ジョジーは体が弱く、その体調の悪さからクララに辛く当たる事があっても、クララの目標「ジョジーを寂しがらせず、親友でいること」を貫きます。
その目標はいわばクララの存在意義。ジョジーが幸せでいるために行動することは、クララ自身の“幸せ”につながっているのでしょう。
終盤クララが「心が幸せでいっぱい」になった場面があるのですが、そこに至るまでのクララの「心」の解釈だったりを考えると、いろいろ目を逸らしたくなるような、同著者の「忘れられた巨人」を読んだときとはまた違う恐怖を感じました。

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